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遮熱塗料とは — 「近赤外」の反射率で決まる助成基準と、色で変わる数字の読み方

この記事は、官公庁・法令・メーカー公式情報などの一次情報と出典を確認したうえで、塗装相場ナビ編集部が作成・更新しています。編集方針については運営ポリシーをご覧ください。

この記事のポイント

  • 遮熱塗料の正式名称は「高日射反射率塗料」。日本塗料工業会は「太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射することにより、塗膜ならびに被塗物の温度上昇を抑えることができる機能性塗料の一つです」と定義しており、断熱材のように熱を通しにくくする仕組みとは別物です
  • 反射率には「全日射」と「近赤外」の2つの数字があり、自治体の助成金が基準にしているのは近赤外のほうです。日本ペイント「サーモアイSi」の40色で見ると、近赤外は40色すべてが50%以上ですが、全日射で50%以上あるのは15色にとどまります
  • 塗装相場ナビの助成金データベース(56制度、2026年7月28日〜8月11日に自治体公式ページで確認)のうち19制度に遮熱・高反射率塗料の記載があり、東京23区では11区が対象として明記しています
  • 基準は自治体で異なります。港区は「明度(L*値)が60以上かつ日射反射率(近赤外域)が60%以上の塗料等」で、屋上・屋根のみが対象、外壁は対象外です
  • 効果は建物の条件で変わります。日本塗料工業会の資料では、断熱材が入っている屋根・壁は省エネ効果が「小さいと考えられます」と整理されています
日差しを受ける住宅の屋根(イメージ)

※画像はイメージです(写真素材: Pexels)

この記事の要点

  • 遮熱塗料の正式名称は「高日射反射率塗料」です。太陽光のうち熱になりやすい近赤外線を反射する塗料で、断熱材のように熱を通しにくくするものではありません。
  • 反射率には「全日射」と「近赤外」の2つの数字があります。自治体の助成金が基準にしているのは近赤外のほうで、色が濃いと全日射の数字は大きく下がります。
  • 塗装相場ナビの助成金データベース56制度(2026年7月28日〜8月11日に自治体公式ページで確認)のうち19制度に遮熱・高反射率塗料の記載があり、東京23区では11区が対象として明記しています。
  • 助成の基準は自治体ごとに違います。港区は明度60以上かつ近赤外60%以上、しかも屋上・屋根のみが対象で外壁は対象外です。
  • 効果は建物の条件で変わります。断熱材が入っている屋根・壁は、日本塗料工業会の資料で省エネ効果が「小さい」と整理されています。

遮熱塗料とは何か — 「反射」であって「断熱」ではない

見積書や助成金のパンフレットで「遮熱塗料」という言葉を見かけますが、これは通称です。正式名称は「高日射反射率塗料」で、(社)日本塗料工業会は次のように定義しています。

「高日射反射率塗料とは、太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射することにより、塗膜ならびに被塗物の温度上昇を抑えることができる機能性塗料の一つです。一般的には遮熱塗料と呼ばれることもあります。」(日本塗料工業会「高日射反射率塗料について」)

太陽光のエネルギーは、紫外線が約3%、可視光線が約47%、赤外線が約50%という内訳になっています。このうち熱に変わりやすいのが赤外線で、同資料は次のように説明しています。

「太陽光に含まれる赤外線は、赤外線の中でも近赤外線とよばれる領域(波長:780~2500nm)であり、最も物質に吸収されやすい波長領域です。」

つまり遮熱塗料は、目に見える光(色を決める可視光線)ではなく、この近赤外線をどれだけ反射できるかで性能が決まる塗料です。色は主に可視光線の反射で決まりますが、同じ色味でも近赤外線の反射率を高めた製品が高日射反射率塗料と呼ばれます。日本の屋根の色については、同資料が「明度(明るさ:L*)が低い色が多いことが判明しています。」と述べており、濃い色の屋根が多いことも、近赤外の反射率を意識する理由の一つになっています。

製品規格であるJIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)も、この近赤外線のデータをもとに定められました。

「吸収すると熱となり温度上昇につながる近赤外波長域のデータに基づき製品JISの規格を設定することとし」

なお、遮熱塗料は「反射」によって塗った面の温度上昇を抑える塗料であり、熱を通しにくくする断熱材とは、はたらき方が異なります。

「全日射」と「近赤外」、助成金が見ているのはどちらか

遮熱塗料のカタログには、日射反射率の数字が「全日射」と「近赤外」の2種類で載っていることがあります。ここを混同すると、助成金の基準を満たすかどうかの読み方を間違えます。

日本ペイント「サーモアイSi」(JIS K5675 屋根用高日射反射率塗料 2種 2級)は、製品ページのカラーラインナップ40色すべてに全日射と近赤外の反射率を載せています。2026年9月21日時点の製品ページの40色を集計すると、次のようになります。

集計項目 値
掲載色数 40色
全日射反射率の範囲 26.6%(クールナスコン)〜91.0%(クールホワイト)
近赤外反射率の範囲 56.9%(クールオレンジエロー)〜87.8%(クールホワイト)
近赤外50%以上の色 40色中40色
近赤外60%以上の色 40色中36色
全日射50%以上の色 40色中15色
日本ペイント「サーモアイSi」代表6色の全日射反射率と近赤外反射率の横棒グラフ。クールホワイト91.0%/87.8%、クールライトグレー54.0%/77.3%、クールブラウン39.0%/71.3%、クールダークグレー34.1%/68.6%、クールブラック28.4%/61.0%、クールナスコン26.6%/57.4%(全日射/近赤外)。近赤外50%・60%の基準線を表示

近赤外の反射率は40色すべてが50%以上ですが、全日射の反射率で50%以上あるのは15色だけです。同じ製品の同じ色でも、全日射の数字だけを見ると「基準に届かない色が多い」ように見えてしまいます。自治体の助成金が基準にしているのは近赤外のほうなので、色を選ぶときは全日射ではなく近赤外の数字を確認する必要があります。

エスケー化研「クールタイトSi」(一般名称「低汚染・超耐久型アクリルシリコン樹脂系屋根用遮熱塗料」、JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 2種・2級(艶有り)、標準41色)は、「太陽光線の中で、放射熱エネルギーの強い近赤外領域を反射し、優れた遮熱性能を実現します。」と特長を説明していますが、製品ページ本体には色別の反射率の数値の記載がありません。製品ページに反射率の数字が載っているかどうかもメーカー・製品によって違うため、色を決める段階では該当製品の公式資料を個別に確認したほうが確実です。

なお、サーモアイSiの製品ページには色ごとの明度(L*値)の記載がありません。後述する港区のように明度も基準に含む制度もありますが、この記事ではどの色が明度の基準を満たすかまでは判定しません。明度はメーカーのカタログや第三者機関の証明書で確認する項目になります。

効果は建物の条件で変わる — 断熱材があると「効果は小さい」

遮熱塗料の効果は、屋根・壁の材質や断熱材の有無によって変わります。日本塗料工業会の資料は、材質・部位・断熱材の有無ごとに省エネ効果を◎(非常に効果有り)・○(効果有り)・△(効果小さい)で整理しています。

材質 塗装部位 断熱材 省エネ効果
コンクリート 屋上 有り △
コンクリート 屋上 無し ◎
コンクリート 壁面 有り △
コンクリート 壁面 無し ○
金属 屋根 有り ○
金属 屋根 無し ◎
金属 壁面 有り △
金属 壁面 無し ○
スレート 屋根 無し ◎
スレート 壁面 無し ○

※スレート×断熱材ありの数値は同資料に示されていません。また壁面については「壁面の場合は方角等の条件により異なります。」という注記が付いています。

断熱材がある部位の効果が小さく評価されている理由について、同資料は次のように説明しています。

「断熱材により室内への熱侵入量が大きく抑えられるため、高日射反射率塗料の効果は小さいと考えられます。」

つまり、すでに断熱材が入っている屋根・壁に遮熱塗料を重ねても、断熱材が無い場合ほどの効果は見込みにくいという整理です。

同資料は実験結果も示しています。(独)建築研究所つくば暴露場内の(財)ベターリビング長屋棟の2室(内床面積7.7帖、温度設定28℃)で、2008年8月5日〜8月18日に測定したところ「約7%の電力量削減効果が観察された。」とされています。これは1つの実験条件での結果であり、住宅の条件によって数字が変わることには注意が必要です。

同様に、エスケー化研の特集ページ「遮熱塗料でCOOLリフォーム」は「最大で約 15 ~ 20℃の屋根表面温度を低下」させるとしたうえで、「建物の形状や立地、使用環境、用途、断熱性により大きく異なりますが、」室内では「約1 ~ 3℃程度の低減効果」があるとしています。ここでも、建物の条件によって大きく変わるという限定が付いていることが重要で、この数字がそのまま自宅に当てはまるとは限りません。

日本塗料工業会は、遮熱塗料の登録制度のページで次のようにも述べています。

「一方で、市場では日射反射やそれ以外の遮熱機能の広告が氾濫し、それが行き過ぎたことにより、逆に一般消費者や建築業界に不信感を抱かせる結果となってしまいました。」

同工業会は2018年10月1日から、遮熱性能基準にもとづく登録と統一表示の運用を始めています。広告の数字をそのまま受け取るのではなく、JISの規格や第三者機関の測定値を確認するという姿勢は、この経緯からも裏付けられます。

自治体の助成金基準は「近赤外」の反射率で決まる

塗装相場ナビの助成金データベースに収録している56制度(2026年7月28日〜8月11日に自治体公式ページで確認)のうち、19制度に遮熱・高反射率塗料の記載がありました(制度名・条件に「遮熱」「高反射率」の記載があるものを数えています)。このうち2026年9月21日に公式ページを取り直して記載を再確認できたのは16制度で、東京23区では11区(足立・葛飾・千代田・中央・港・新宿・台東・墨田・江東・品川・世田谷)が遮熱・高反射率塗装を助成対象に明記しています。

このうち、反射率の数値基準を公式ページ本文に明記している制度は次のとおりです(2026年9月21日再取得)。

自治体ごとの遮熱塗料の助成基準の対応表。足立区は近赤外50%以上、千代田区は近赤外50%以上(実際に塗る色の数字も50%以上が必要)、港区は明度60以上かつ近赤外60%以上で屋根・屋上のみ対象、新宿区はJIS K5675適合品または近赤外50%以上、墨田区は近赤外50%以上、東京都(令和8年度)は近赤外50%以上かつ断熱材設置とセットが条件であることを示す表
自治体・制度 基準 対象部位など
足立区 省エネリフォーム補助金 近赤外線領域における日射反射率が50%以上の塗料で塗装すること 戸建て住宅が対象
千代田区 ヒートアイランド対策助成 第三者機関における日射反射率測定値(近赤外線領域)が50%以上 屋上・壁面。助成対象経費の50%(上限50万円)
港区 高反射率塗料等助成 明度(L*値)が60以上かつ日射反射率(近赤外域)が60%以上 屋上・屋根のみ対象、外壁は対象外
新宿区 省エネルギー及び創エネルギー機器等補助制度 JIS K5675適合品又は日射反射率(近赤外線領域)50%以上 高反射率塗装(屋根又は屋上)
墨田区 地球温暖化防止設備導入助成制度 日射反射率(近赤外領域)が50%以上の高反射塗料 JIS K5602・K5675等の規格による性能証明資料が必要
東京都 既存住宅における省エネ改修促進事業(令和8年度) JIS K5602の規定による日射反射率(近赤外線波長領域)が50%以上 断熱材の設置を行った部位に遮熱塗装を施工することが条件

6制度に共通しているのは、基準が「近赤外」で統一されていることです。前の章のとおり、サーモアイSiは40色すべてが近赤外50%以上なので、足立区・千代田区・新宿区・墨田区の50%基準であれば色の選択肢は広くなります。一方、港区は近赤外60%以上かつ明度60以上という2つの条件です。サーモアイSiで見ると、近赤外60%未満の色はクールチョコレート(全日射28.4%/近赤外58.2%)、クールオレンジエロー(41.3%/56.9%)、クール赤さび(35.7%/58.0%)、クールナスコン(26.6%/57.4%)の4色で、製品ページの数字で見るかぎり港区の近赤外60%以上に届きません。明度については製品ページに数値の記載が無いため、どの色が満たすかはこの記事では判定しません。

千代田区の基準にはもう一つ注意点があります。「なお、使用色での測定値がない場合には、基準色(第三者機関)・使用色(メーカー発行のカタログ等)の日射反射率がともに50%以上であること。」とされており、白などの基準色の数字が良いだけでは足りず、実際に塗る色の数字も50%以上であることが求められる仕組みです。

東京都の事業は、遮熱塗装だけでは対象になりません。「本事業において断熱材の設置を行った部位に遮熱塗装を施工すること。」とあり、断熱材の設置とセットであることが条件です。断熱材がある部位では遮熱塗料の省エネ効果が小さい、という前の章の日本塗料工業会の整理と合わせて読むと、この制度は遮熱単独ではなく、断熱を主とした改修に遮熱を上乗せする形を想定していると読めます。

なお、助成金の受付状況(受付中かどうか)は日々変わるため、この記事では扱いません。最新の状況は東京都の助成金一覧と助成金データベースで確認してください。

屋根だけが対象、外壁は対象外の自治体もある

助成対象の部位も自治体ごとに違います。港区は次のように明記しています。

「※屋上・屋根のみが助成対象で、外壁は助成対象外です。」

一方、千代田区の対象部位は「屋上・壁面」で、外壁(壁面)も対象に含まれています。同じ東京23区でも、屋根だけが対象なのか、外壁も含むのかは制度によって異なるため、申し込む部位が対象かどうかは個別に確認する必要があります。

助成対象として遮熱・高反射率塗装を挙げているものの、公式ページの本文には数値基準の記載が見当たらない自治体もあります(2026年9月21日再取得時点)。葛飾区・中央区・台東区・江東区・品川区・世田谷区・大阪府高槻市・長崎市・大分市がこれにあたり、要綱や手引きのPDFなど別資料で定めている可能性があります。基準を確認したい場合は、各自治体の該当制度のページから要綱・手引きまでたどることをおすすめします。

遮熱そのものが対象から外れている自治体、あるいは条件付きになっている自治体もあります。八王子市の居住環境整備補助金は、対象工事を「窓、床、天井、外壁、屋根の断熱改修(遮熱は除く)」と明記しており、断熱改修の区分から遮熱を除いています。大分市は「大分市では外壁塗装のみの補助は行っておりません。」としつつ、対象工事と同時に行う遮熱・断熱性能のある塗料での外壁塗装については「補助対象となる場合があります。」としています。単独の外壁塗装なのか、対象工事とあわせて行うのかで扱いが変わる例です。

色を決める前に、自治体の基準と反射率の数字を確認する

ここまで見てきたとおり、数値基準を公式ページに明記している6制度のうち5制度は「近赤外の反射率が50%以上」ですが、対象部位(屋根のみか外壁も含むか)、明度の条件の有無、断熱材設置とのセット要件は自治体ごとに違います。見積書の色を決める前に、次の2つを確認してください。

  1. 申し込む自治体の制度で、基準になっている数字と対象部位を確認する。 「近赤外◯%以上」なのか「明度◯以上かつ近赤外◯%以上」なのか、対象が屋根だけか外壁も含むかは、自治体の公式ページで個別に異なります。最新の一覧は東京都の助成金一覧、他の地域も含めた全体は助成金データベースで確認できます。
  2. 使う色の近赤外反射率を、メーカーのカタログか第三者機関の測定値で確認する。 カタログに全日射と近赤外の両方が載っている場合は、助成金の基準になっている近赤外の数字を見てください。色によって差が大きく、同じ製品でも基準を満たす色と満たさない色があります。カタログに数値の記載がない製品もあるため、その場合は施工店やメーカーに直接確認する必要があります。

助成金の受付状況は自治体・年度によって変わります。制度と反射率の基準を確認したうえで、施工店の見積もりに進むことをおすすめします。

よくある質問

遮熱塗料とは何ですか?

正式名称は「高日射反射率塗料」です。日本塗料工業会は「高日射反射率塗料とは、太陽光に含まれる近赤外領域の光を高いレベルで反射することにより、塗膜ならびに被塗物の温度上昇を抑えることができる機能性塗料の一つです。一般的には遮熱塗料と呼ばれることもあります。」と説明しています。太陽光のうち熱になりやすい近赤外線を反射する塗料で、断熱材のように熱の伝わりそのものを抑える仕組みとは異なります。

助成金の基準になっている反射率は「全日射」と「近赤外」のどちらですか?

自治体の助成金が基準にしているのは近赤外の反射率です。全日射の反射率は色の濃さに大きく左右され、色が濃いほど下がります。同じ製品でも、近赤外の数字は基準を満たしていても全日射の数字は低い、というケースが実際にあります。

屋根塗装だけでなく外壁塗装も遮熱塗料の助成対象になりますか?

自治体によって異なります。港区は「※屋上・屋根のみが助成対象で、外壁は助成対象外です。」と明記しており、外壁は対象外です。一方、千代田区は屋上・壁面の両方が対象になっています。制度ごとに対象部位が違うため、申し込む前に該当自治体の公式ページで確認する必要があります。最新の一覧は東京都の助成金一覧で確認できます。

遮熱塗料の助成金は今から申し込めますか?

受付状況は自治体・年度によって変わるため、この記事では扱っていません。塗装相場ナビの東京都の助成金一覧と助成金データベースで最新の受付状況を確認してください。

出典

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