塗り替え時期を見極める
スレート屋根は塗装で維持できる? 化粧スレート・カラーベストの劣化サインと塗装できない状態の見分け方
この記事は、官公庁・法令・メーカー公式情報などの一次情報と出典を確認したうえで、塗装相場ナビ編集部が作成・更新しています。編集方針については運営ポリシーをご覧ください。
この記事のポイント
- スレート屋根は「化粧スレート」「カラーベスト」「コロニアル」など複数の呼び方があり、屋根材メーカーは「カラーベスト」、塗料メーカーのカタログは「彩色スレート瓦」「スレート屋根」という表記を使う傾向がある
- エスケー化研の公式カタログは、彩色スレート瓦・スレート屋根について「基材自体の強度低下が著しく、塗装できない場合があります」と注意喚起している(トタンなどの金属屋根には無い、スレート特有の注意点)
- スレート屋根の塗装では、瓦の重なり部分がふさがれないようにする「縁切り」が標準工程だが、差し込み型の縁切り補助部材(タスペーサー等)については、屋根材メーカーのケイミューが公式カタログで「割れの原因になるため使用しないでください」と注意している
- 日本ペイント「サーモアイシーラー」は、エポキシ樹脂によって「ぜい弱素材の表面を補強し、素材と強固に密着します」とする専用下塗り材で、色あせや初期の脆弱化には塗装で対応できる余地があることを示す一方、基材の強度低下が著しい状態は塗装の対象外になる
- 2004年以前に製造された化粧スレートの一部にはアスベストが含まれる可能性があり、国土交通省・経済産業省が共同運営する石綿含有建材データベースで製品名や製造時期を確認できる
※画像はイメージです(写真素材: Pexels)
「スレート屋根はもう寿命だから葺き替えるしかない」と言われる一方、「まだ塗装で十分もつ」とも言われ、判断に迷う方は多いと思います。スレート屋根は、トタンなどの金属屋根とは違う理由で「塗装できない」状態になりうる屋根材です。この記事では、屋根材メーカーと複数の塗料メーカーの公式情報を突き合わせながら、スレート屋根の劣化サインの見分け方、塗装工程で行われていること、そして塗装で対応できる状態とできない状態の線引きを整理します。
この記事の要点
- スレート屋根は「化粧スレート」「カラーベスト」「コロニアル」など複数の呼び方があり、屋根材メーカーは「カラーベスト」、塗料メーカーのカタログは「彩色スレート瓦」「スレート屋根」という表記を使う傾向があります。
- エスケー化研の公式カタログは、彩色スレート瓦・スレート屋根について「基材自体の強度低下が著しく、塗装できない場合があります」と注意喚起しています(トタンなどの金属屋根には無い、スレート特有の注意点です)。
- スレート屋根の塗装では、瓦の重なり部分がふさがれないようにする「縁切り」が標準工程ですが、差し込み型の縁切り補助部材(タスペーサー等)については、屋根材メーカーのケイミューが公式カタログで「割れの原因になるため使用しないでください」と注意しています。
- 日本ペイント「サーモアイシーラー」は、エポキシ樹脂によって「ぜい弱素材の表面を補強し、素材と強固に密着します」とする専用下塗り材で、色あせや初期の脆弱化には塗装で対応できる余地があることを示す一方、基材の強度低下が著しい状態は塗装の対象外になります。
- 2004年以前に製造された化粧スレートの一部にはアスベストが含まれる可能性があり、国土交通省・経済産業省が共同運営する石綿含有建材データベースで製品名や製造時期を確認できます。
スレート屋根とは — 呼び方の違いとメーカーによる区分
「スレート屋根」は、セメントと繊維質を主成分とする薄い板状の屋根材を、少しずつ重ねて葺く屋根の総称です。天然の粘板岩を使う「天然スレート」もありますが、日本の住宅で使われているのはほとんどがセメント系の「化粧スレート」で、「カラーベスト」「コロニアル」という呼び方も広く使われています。
呼び方が複数あるのは、資料によって主語が違うためです。屋根材メーカーであるケイミュー株式会社は、公式カタログで自社製品を「カラーベスト」「グラッサ」といった商品名で表記しています。一方、塗料メーカー各社の公式カタログは、屋根材メーカーを問わない一般名称として「彩色スレート瓦」「スレート屋根」という表記を使う傾向があります。たとえばエスケー化研の公式カタログでは、屋根用遮熱塗料「クールタイト」シリーズの適用下地として「彩色スレート瓦・スレート屋根・金属屋根・トタン屋根等」が挙げられています(出典: エスケー化研公式カタログ)。日本ペイントの「サーモアイSi」製品ページでも、適用下地は「スレート・波形スレート屋根、金属屋根・トタン、住宅用化粧スレート屋根」と表記されており、同じ屋根材でも「スレート」「化粧スレート」という2つの言い方が1つの製品ページに混在しています(出典: 日本ペイント公式サイト)。読み比べる際は、どの呼び方も同じ系統の屋根材を指しているとみて差し支えありません。
スレート屋根に出やすい劣化サイン
スレート屋根の劣化は、大きく分けて「表面の塗膜の劣化」と「基材そのものの劣化」の2段階で進みます。この2段階を分けて考えることが、後述する「塗装できる/できない」の判断のベースになります。
まず表面の塗膜の劣化については、ケイミューの公式カタログに次の記載があります(出典: ケイミュー公式カタログ)。
ケイミュー屋根材の表面の色が薄くなった場合でも基材に損傷等なければ防水性などの屋根材基本性能に問題はありません。リフレッシュコートは美観の回復・向上を図るための塗料です。
つまり、色あせやチョーキング(白亜化)だけであれば、それは主に美観の問題であり、基材が無事であれば防水性能そのものはまだ保たれているという整理です。ケイミューは続けて、市販の塗料を使った場合のリスクにも触れています。
市販の塗料の場合、種類によっては再塗装後、数年で剥離することがあります。再塗装には専用塗料であるリフレッシュコートをご使用ください。
これは屋根材メーカーが自社製品向けに「専用塗料」の使用を推奨している例で、汎用の塗料を使うと再塗装した塗膜自体が早期に剥離するリスクがあることを示しています。
一方、基材そのものの劣化サインとしては、反り・ひび割れ・欠け・苔やカビの広範囲な付着などが挙げられます。これらは色あせと違い、屋根材の強度そのものに関わるサインです。次の見出しで扱う「塗装できない場合もある」という注意喚起は、この基材の劣化を指しています。
スレート屋根特有の弱点 — 経年による強度低下と「縁切り」
トタンなどの金属屋根の弱点が「さび」であるのに対し、スレート屋根の弱点は「基材自体の強度低下」です。エスケー化研の公式カタログには、次の注意喚起があります(出典: エスケー化研公式カタログ)。
彩色スレート瓦・スレート屋根の場合、基材自体の強度低下が著しく、塗装できない場合がありますので、ご注意ください。
金属屋根の適用下地に添えられていない、このスレート特有の注意書きは、スレートという素材が持つ固有のリスクを示しています。表面を塗り替えても、下地となるセメント板そのものが薄く脆くなっていれば、塗装だけでは屋根材としての強度を回復できません。
もうひとつのスレート特有の弱点が、瓦の重なり部分の水はけです。スレート屋根は瓦を少しずつ重ねて葺いてあり、この重なり部分にあるすきまから、屋根内部に入った雨水や結露水を排出する構造になっています。ところが塗装によってこのすきまが塗料でふさがれることがあり、これを放置すると内部に水が溜まって腐食や漏水の原因になります。この作業を「縁切り」と呼び、関西ペイントの公式カタログにも次の案内があります(出典: 関西ペイント公式カタログ)。
上下の瓦が塗料で接着している箇所は、皮スキなどで縁切りを行ってください。(瓦の上下に隙間がないと結露水の通気ができなくなり、素材の腐食・漏水につながる恐れがあります。)
縁切りには、カッターや皮スキで塗料の接着部分を切り直す方法のほかに、あらかじめすきまを確保する部材を差し込んでおく工法もあり、こちらは一般に「タスペーサー」などと呼ばれています。ただし、屋根材メーカーのケイミューは自社製品向けの公式カタログで、この差し込み型の部材について次のように注意しています(出典: ケイミュー公式カタログ)。
水切り部に塗料がたまると雨漏れにつながりますので、必ず「縁切り」をしてください。ただし、差し込み型の縁切り補助部材は割れの原因になるため使用しないでください。
つまり「縁切りをすること」自体は屋根材メーカー・塗料メーカーの双方が必須の工程としているものの、差し込み型の部材を使ってよいかどうかについては、今回確認した資料の中で見解が一致していません。塗料メーカー2社(エスケー化研・関西ペイント)の公式カタログには、差し込み型部材の可否そのものに触れた記載は見当たらず、縁切りの方法として「皮スキなどで切り直す」形が案内されています。屋根材メーカーが自社製品に対して明確な注意を出している以上、どちらの工法を選ぶかは、使われている屋根材の種類やメーカーを踏まえたうえで施工店に確認するのが安全です。
塗装工程で行われていること — 素地調整・下塗り・上塗り
スレート屋根の塗装は、劣化した旧塗膜や汚れを取り除く「素地調整」から始まります。関西ペイントの公式カタログでは、標準的な素地調整として次のように定義されています(出典: 関西ペイント公式カタログ)。
高圧洗浄、3種ケレン程度の処理を行い、さび・劣化(膨れ・ワレ・浮き)塗膜・ごみ・よごれなどを入念に除去した清浄な面にする。
この素地調整のあとに行われるのが下塗りです。日本ペイントの「サーモアイシーラー」は、公式製品ページで「サーモアイシリーズ専用のスレート系屋根用下塗り(シーラー)」と説明されており、適用下地として「波形スレート屋根、住宅用化粧スレート屋根」が挙げられています(出典: 日本ペイント公式サイト)。この製品の特長として、次の記載があります。
エポキシ樹脂によって、ぜい弱素材の表面を補強し、素材と強固に密着します。
「ぜい弱素材の表面を補強」という表現は、スレートが経年で表面から脆くなっていく素材であることを前提にした製品設計であることを示しています。つまり、表面がある程度脆くなった状態であっても、専用の補強シーラーで下地を固めたうえで上塗りするという工程が、塗料メーカー側の標準的な対応として用意されています。この下塗りのあとに、上塗り材(サーモアイSiなど)を重ねて仕上げるのが基本的な流れです。
なお、日本ペイントの下塗り材には金属屋根向けの「サーモアイプライマー」(適用下地は「鋼板屋根、トタン屋根などの塗り替え」)もありますが、こちらの製品ページにスレート屋根への言及はありません(出典: 日本ペイント公式サイト)。同じサーモアイシリーズでも、屋根材によって専用の下塗り材が使い分けられている点は、見積もりの内容を確認する際のチェックポイントになります。
「塗装できる」状態と「塗装できない」状態の線引き
ここまでの内容を踏まえると、スレート屋根の状態は次の3段階で捉えることができます。
- 色あせ・チョーキングの段階: ケイミューの情報によれば、基材に損傷がなければ防水性などの基本性能自体はまだ保たれている段階です。専用塗料での再塗装(美観の回復)が中心の対応になります。
- 表面が脆くなり始めている段階: 日本ペイント「サーモアイシーラー」のような、脆弱化した表面を補強する専用の下塗り材を使うことで、塗装による対応の余地が残っている段階です。
- 基材自体の強度低下が著しい段階: エスケー化研が注意喚起するとおり、この段階では塗装できない場合があります。反り・ひび割れ・欠けが目立つ、瓦の一部が破損している、雨漏りがすでに発生しているといった状態は、塗装ではなく葺き替えやカバー工法(既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねる工法)を含めて、業者に現地診断を依頼することをおすすめします。
年数だけで一律に判断するのではなく、実際に基材がどの段階にあるかを現地で確認してもらうことが基本です。塗料グレード別の期待耐用年数の考え方は屋根塗装の耐用年数は何年?で解説していますので、あわせてご確認ください。
2004年以前の製品にはアスベストを含むものがある
古いスレート屋根を検討する際にもう一つ知っておきたいのが、アスベスト(石綿)含有の可能性です。国土交通省と経済産業省は連携して「石綿含有建材データベース」を運営しており、石綿に関連する技術情報や建築実績情報を整理して公開しています(出典: 国土交通省公式サイト)。このデータベースの検索条件には「石綿含有住宅屋根用化粧スレート」という建材区分が用意されており(出典: 石綿含有建材データベース)、製品名や製造時期からアスベストの含有可能性を調べることができます。
ただし、塗装工事は既存の屋根材の表面に手を加える工事であり、その内容がアスベストの規制にどう関わるかは、工事の範囲や規模によって異なります。気になる場合は、このデータベースで製品情報を調べたうえで、施工を依頼する業者に確認することをおすすめします。この記事では断定的な法規制の説明は行わず、公的なデータベースの存在を紹介するにとどめます。
まとめ
スレート屋根の「塗装できる/できない」は、トタンなどの金属屋根とは違う軸で判断する必要があります。色あせやチョーキングの段階であれば専用塗料による塗装で美観と性能を維持でき、表面がやや脆くなり始めた段階でも専用の補強シーラーで対応できる余地があります。一方、基材自体の強度低下が著しい場合は、エスケー化研が注意喚起するとおり塗装の対象外になり、葺き替えやカバー工法を含めた現地診断が必要です。縁切りの工法(差し込み型部材の可否)は資料によって見解が分かれるため、使われている屋根材に合わせて施工店に確認しましょう。古い住宅では、塗装を検討する前に石綿含有建材データベースで製品情報を確認しておくと安心です。費用の目安を先に把握しておきたい場合は屋根塗装の費用相場や相場計算機をご覧のうえ、複数の業者から見積もりを取って比較することをおすすめします。
よくある質問
「スレート屋根」「化粧スレート」「カラーベスト」「コロニアル」は同じものですか?
いずれもセメント系の薄い板を重ねて葺く屋根材を指しますが、呼び方は資料によって違います。屋根材メーカーのケイミューは自社製品を「カラーベスト」と呼び、塗料メーカー各社の公式カタログは「彩色スレート瓦」「スレート屋根」という表記を使う傾向があります。「コロニアル」はケイミューの主力商品シリーズの名称です。どれも指している屋根材の系統はおおむね同じだと考えて差し支えありません。
スレート屋根の劣化サインには何がありますか?
色あせ・チョーキング(白亜化)・苔やカビの付着・反り・ひび割れなどが代表的なサインです。ケイミューの公式情報によれば、表面の色が薄くなるだけであれば基材に損傷がなければ防水性などの基本性能に問題はないとされていますが、反りやひび割れは基材そのものの劣化のサインであり、単なる美観の問題とは区別して考える必要があります。
「縁切り」「タスペーサー」とは何ですか?
スレート屋根は瓦を少しずつ重ねて葺いてあり、重なり部分のすきまから雨水や結露水を排出する構造になっています。塗装でこのすきまがふさがれると水はけが悪くなるため、塗装の最後にカッターなどですきまを切り直す作業を「縁切り」と呼びます。あらかじめすきまを確保する部材を差し込む工法もありますが、屋根材メーカーのケイミューは自社製品向けの公式カタログで、差し込み型の縁切り補助部材について「割れの原因になるため使用しないでください」と注意しています。工法の選び方は屋根材の種類によって異なりうるため、施工店に確認することをおすすめします。
スレート屋根はいつまで塗装で維持できますか?
年数で一律に決まるものではなく、基材の状態で判断します。エスケー化研の公式カタログは「彩色スレート瓦・スレート屋根の場合、基材自体の強度低下が著しく、塗装できない場合がありますので、ご注意ください」と注意喚起しており、色あせや初期のチョーキングの段階であれば塗装で対応できる可能性がありますが、基材の反り・ひび割れ・欠けが目立つ場合は、業者による現地診断で塗装以外の選択肢(葺き替え・カバー工法)も含めて検討することをおすすめします。
スレート屋根の塗り替え費用はどれくらいですか?
具体的な相場は屋根の形状や劣化状況によって変わるため、当サイトの屋根塗装の費用相場はいくら?で解説している全国の目安データをご確認ください。
出典
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