悪質商法から身を守る
外壁塗装で「詐欺」と言われる勧誘 — 保険金トークと契約条項の確認点
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この記事のポイント
- 「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスの相談は、2010年度111件から2019年度2,684件へ約24倍に増加している(国民生活センター)
- 契約当事者に占める60歳以上の割合は、2016年度80%・2017年度75%と高い水準
- 問題点として、手数料・違約金の説明不足、見積もりと違う工事、うその理由での保険金請求などが挙げられている
- 火災保険では「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害」は支払いの対象外(日本損害保険協会)
- 保険金が下りるかを判断するのは保険会社であり、工事業者ではない。契約前に保険会社・代理店へ連絡するのが基本
※画像はイメージです(写真素材: Pexels)
この記事の要点
- 「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスの相談は、2010年度111件から2019年度2,684件へと約24倍に増えています(国民生活センター)。
- 契約当事者に占める60歳以上の割合は、2016年度80%・2017年度75%と高い水準です。
- 公表資料が挙げる問題点は、手数料・違約金の説明不足、見積もりと違う工事、うその理由での保険金請求など。
- 火災保険では「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害」は支払いの対象外です(日本損害保険協会)。
- 保険金が下りるかを判断するのは保険会社であり、工事業者ではありません。
「詐欺」と検索される勧誘の中身
外壁塗装をめぐって「詐欺ではないか」と不安になる場面はいくつかありますが、公的機関が繰り返し注意喚起しているパターンのひとつが「保険金が使える」という勧誘です。国民生活センターは2012年、2018年、2020年と複数回にわたって注意喚起を公表しています。
ここで扱うのは、公表された相談統計と相談事例です。個別の業者を指すものではなく、このような相談が実際に寄せられているという事実の整理としてお読みください。
なお、不安をあおって契約を急がせる「点検商法」という別の入口については 点検商法とは — 手口と対処法 で解説しています。この記事は、契約後に金銭面の被害が生じるパターンを中心に扱います。
相談件数は10年で約24倍に増えた
国民生活センターが2020年10月1日に公表した資料によると、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録された「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスの相談件数は次のように推移しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2010年度 | 111件 |
| 2011年度 | 282件 |
| 2012年度 | 548件 |
| 2013年度 | 690件 |
| 2014年度 | 663件 |
| 2015年度 | 817件 |
| 2016年度 | 1,082件 |
| 2017年度 | 1,180件 |
| 2018年度 | 1,759件 |
| 2019年度 | 2,684件 |
2019年度は2010年度(111件)の約24倍です。同資料は「依然として関東地方で多くの相談がみられる一方で、近年は近畿地方など他の地域でも相談が増えています」とし、さらに「事業者による勧誘・契約は10月前後の秋台風シーズンに増加する傾向があり、この時期は特に注意が必要です」と述べています。
2018年9月6日の公表資料では、契約当事者に占める60歳以上の割合も集計されています。2016年度80%、2017年度75%、2018年7月31日までの受付分で80%と、いずれも高い水準です。高齢の家族が同居している家庭では、あらかじめこの手口を共有しておくことが備えになります。
※上記より新しい年度の確定値は、これらの公表資料には示されていません。年度別の推移としてはここまでが公表されている範囲です。
公表資料が挙げている問題点
国民生活センターの2つの資料は、相談事例から見える問題点を次のように整理しています。
- 自己負担がないことを強調し、契約の内容や手数料・違約金の説明が不十分
- 見積もりと違う工事をされたり、修理内容がずさんなことも
- 保険会社にうその理由で保険金請求が行われている
- 屋根に細工をしたり、クーリング・オフをさせないようにしたりする悪質な場合も
- 「保険金が使える」と訪問販売で契約しており、長時間勧誘も行われている
2020年の資料に掲載されている相談事例では、雨漏りをしていた住宅に事業者が訪問し、屋根の損傷箇所を撮影して約400万円の工事見積もりを提示。保険申請は事業者がすべて行い、「自分たちの存在は保険会社に伝えないでほしい」と言われたという内容が紹介されています。その後、保険会社の鑑定人が見積金額の全額は出ないと判断。契約時に違約金の説明はなかったものの、書類には工事をしない場合に保険金の5割を違約金として支払うと記載されていた、という相談です(2020年6月受付・40歳代・男性)。
そのほか、「工務店に壊れていない瓦を外す細工をされ『黙っているように』と指示された」「保険で修理可能と言われたのに保険金が下りなかった」といった相談も公表されています。
火災保険は「経年劣化」には使えない
判断を誤りやすいのが、火災保険で何が補償されるかという点です。日本損害保険協会は次のように説明しています。
- 支払われる場合: 「台風、暴風、ひょう、地震などによるお住まいへの被害」は多くの場合、加入している火災保険や地震保険で補償されます。
- 支払われない場合: 「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害はお支払いの対象とはなりません。」
外壁塗装を検討する理由の多くは、色あせ・チョーキング(白い粉が付く)・塗膜の劣化といった経年による変化です。これらは通常、自然の消耗・劣化にあたります。「築年数が経って傷んできたから保険で塗り替える」という理屈は、保険の仕組みと合いません。
外壁の状態が経年劣化なのか、災害による被害なのかの区別がつかない場合も、判断するのは保険会社です。まず加入先へ連絡してください。自分でチェックできる劣化のサインは 外壁の劣化サイン7つ にまとめています。
「保険金で直せる」と言われたときの確認順序
- その場で契約しない — 国民生活センターは「勧誘されてもすぐに契約しないようにしましょう」と繰り返し呼びかけています。訪問販売にあたる契約は、書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフの対象になり得ます(外壁塗装のクーリングオフ)。
- 先に保険会社・代理店へ連絡する — 保険金が下りるかを判断するのは保険会社です。日本損害保険協会も「住宅の修理を業者と契約する前に、ご契約している損害保険会社または損害保険代理店へご相談ください」としています。
- 経年劣化は対象外という原則を知る — 上で触れたとおりです。
- 手数料・違約金の条項を読む — 「工事をしない場合は保険金の◯割」といった定めがないか、契約書面を必ず確認します。説明がなかった場合でも書面に記載されていることがあります。
- うその理由で請求しない — 実際の被害と異なる内容での請求は、契約者自身の責任問題になり得ます。業者から勧められても応じないでください。
相談窓口
- 保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル(日本損害保険協会): 0120-309-444 / 受付時間 午前9時〜12時・午後1時〜5時(月〜金、祝日・休業日を除く)
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」: 最寄りの市町村・都道府県の消費生活センター等を案内する全国共通の3桁の電話番号
工事の内容や見積書そのものについての相談先は、外壁塗装のトラブルは何が多いのか で紹介している住まいるダイヤルが適しています。困りごとの種類によって窓口を使い分けてください。
契約前にできる備え
- 訪問を受けた段階での確認事項は 訪問営業が来た時のチェックリスト にまとめています。会社の所在地・固定電話・建設業許可の確認方法まで具体的に紹介しています。
- 提示された金額が妥当かどうかの手がかりは、費用相場ページ と 相場計算機 で確認できます。1社の金額だけで判断せず、複数社の見積もりを比べることが基本です。
- 見積書のどこを見るかは 見積書の読み方 と 見積書チェック をご利用ください。
この記事の位置づけについて
ここで紹介したのは、公的機関に寄せられた相談として公表されている内容です。このような手口を使う一部の事業者が存在するという事実であり、訪問して営業する事業者すべてや、塗装業界全体を否定するものではありません。また、火災保険が住宅の被害に使えること自体は正当な仕組みです。問題になっているのは、仕組みの説明の仕方と契約条項、そして請求の内容です。
まとめ
「保険金が使える」という勧誘に関する相談は、2010年度の111件から2019年度の2,684件へと約24倍に増えました。契約当事者の多くが高齢者で、手数料・違約金の説明不足や、うその理由での保険金請求といった問題が公表資料で指摘されています。
火災保険は経年劣化には使えません。そして保険金が下りるかを判断するのは保険会社です。その場で契約せず、先に保険会社へ連絡する — この順序を守るだけで、公表されている相談事例の多くは避けられる形になっています。
よくある質問
「火災保険を使えば自己負担なく外壁を直せる」と言われました。本当ですか?
台風・暴風・ひょうなどによる被害は多くの場合、加入している火災保険で補償されます。一方、日本損害保険協会は「自然の消耗もしくは劣化または性質によるさびなどによって生じた損害はお支払いの対象とはなりません」と説明しています。保険金が下りるかを判断するのは保険会社であり、工事業者ではありません。契約前に加入先の保険会社・代理店に相談してください。
申請サポートを業者に任せても問題ありませんか?
国民生活センターは、保険金請求は加入者本人が行うことを基本とし、申請サポートを受ける前に損害保険会社に連絡するよう呼びかけています。高額な手数料や違約金が定められている契約もあるため、書面の条項を必ず確認してください。
契約書に「工事をしない場合は違約金」と書かれていました。よくあることですか?
国民生活センターが公表した相談事例には、契約時に違約金の説明がなく、書類には工事をしない場合に保険金の5割を違約金として支払うと記載されていた、という内容があります。金額の大きい条項ほど、契約前に確認することが大切です。
うその理由で保険金を請求するとどうなりますか?
国民生活センターは「うその理由で保険金を請求することは絶対にやめましょう」と呼びかけています。実際の被害と異なる内容での請求は、契約者本人の責任問題になり得ます。業者から勧められても応じないでください。
契約してしまった後でも解除できますか?
訪問販売にあたる契約であれば、契約書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができる場合があります。詳しくは 外壁塗装のクーリングオフ をご覧ください。不安がある場合は消費者ホットライン「188」にご相談ください。
出典
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