塗装の基礎
無機塗料とは — 「無機」の意味と、公表されている耐用年数・費用の目安
この記事は、官公庁・法令・メーカー公式情報などの一次情報と出典を確認したうえで、塗装相場ナビ編集部が作成・更新しています。編集方針については運営ポリシーをご覧ください。
この記事のポイント
- 「無機塗料」と呼ばれる製品は、メーカー各社とも公式に「有機樹脂と組み合わせている」と説明しており、無機成分だけでできているわけではない
- 公表されている期待耐用年数は、アステックペイントの2製品で20〜22年と25〜28年、SK化研のプレミアム無機シリーズは具体的な年数を公表していない
- 年数の根拠となる促進耐候性試験も、キセノンランプ式・メタルハライドランプ式と製品によって条件が異なる
- 30坪の成約平均額は無機塗料が119.3万円、シリコン塗料が83.3万円で、その差は36.0万円(同一集計元のデータ)
- メーカー自身が「試験環境下における推測値であり、耐候性を保証するものではありません」と留保をつけている
※画像はイメージです(写真素材: Pexels)
この記事の要点
- 「無機塗料」と呼ばれる製品は、メーカー各社とも公式に「有機樹脂と組み合わせている」と説明しています。無機成分だけでできた塗料という意味ではありません。
- 公表されている期待耐用年数は、アステックペイントの2製品で20〜22年と25〜28年。SK化研のプレミアム無機シリーズは具体的な年数を公表していません。
- 年数の根拠となる促進耐候性試験の条件も、キセノンランプ式・メタルハライドランプ式と製品によって異なります。
- 30坪の成約平均額は無機塗料が119.3万円、シリコン塗料が83.3万円で、その差は36.0万円です(同一の集計元によるデータ)。
「無機」とは何を指しているのか
石やガラスなどに代表される無機化合物は、紫外線や酸・アルカリなどの薬品に強く、耐久性に優れているとSK化研は説明しています。この性質を塗料に取り込もうという発想が、外壁塗装で「無機塗料」と呼ばれている製品群の出発点です。
ただし、公式の製品情報を読むと、各社とも無機成分だけで塗膜を作っているわけではないことを明記しています。
- アステックペイント「無機REVO1000-IR」: 「有機無機ハイブリッド樹脂により高い耐候性を実現」とし、「無機成分のコア層をHALS(光安定剤)が配合された特殊な有機成分のシェル層で覆う」ことで、耐候性・強靭性・柔軟性を兼ね備えた構造にしていると説明しています。
- アステックペイント「超低汚染リファイン500無機-IR」: 「主成分に無機成分・有機成分の2層で構成される樹脂を採用し、結合部分にも無機成分を採用」。同社はこれを「トリプル無機複合技術」と呼び、「従来の無機有機ハイブリッド塗料を凌ぐ『超耐候性』を実現」としています。
- SK化研「エスケープレミアム無機シリーズ」: 「無機ハイブリッド技術」を採用し、「有機樹脂の柔軟性を兼ね備えているため、塗り替えにも適しており」と説明しています。
つまり「無機系=無機100%」ではなく、無機成分と有機樹脂をどう組み合わせるかがメーカーごとの技術になっている、というのが公式情報から読み取れる内容です。「無機だから硬くて割れやすい」といった一般論をそのまま当てはめず、検討している製品が公式にどう説明されているかを確認するのが確実です。
公表されている内容は製品ごとに違う
3つの製品を並べると、そろっていない点が3つあります。
1. 期待耐用年数
- 無機REVO1000-IR: 20〜22年
- 超低汚染リファイン500無機-IR: 25〜28年
- エスケープレミアム無機シリーズ: 具体的な年数の公表なし(「塗り替えサイクルの目安」の図はあるものの、「塗り替え年数は目安です。建物の立地条件、環境等によって異なります」と注記)
同じメーカーの製品同士でも5〜6年の開きがあります。「無機系だから何年」と一律には言えません。
2. 試験の条件
年数の根拠になっている促進耐候性試験の条件も異なります。無機REVO1000-IRはキセノンランプ式で「約20〜22年経過後も光沢保持率80%以上を保持」、超低汚染リファイン500無機-IRはメタルハライドランプ式で「約25〜28年相当」経過後も光沢保持率80%以上としています。ランプの種類が違えば試験条件も違うため、年数の数字だけを横並びで比較すると実態を取り違えることがあります。
3. 年数に付いている留保
アステックペイントは無機REVO1000-IRについて「あくまで試験環境下における推測値であり、耐候性を保証するものではありません。実際の自然ばく露環境下では、下地の状態、施工方法、気象条件により耐候性は異なる場合があります」と明記しています。メーカー自身が保証ではないと述べている数値である、という前提で読む必要があります。
塗料グレード全体の位置づけについては 塗料グレードの違い — シリコン/ラジカル/フッ素/無機の特徴 で、4つのグレードを横断して整理しています。
無機成分がもたらすとされる、年数以外の性能
各社の公式情報では、耐候性以外の性能も説明されています。年数だけに目を向けると見落としやすい部分です。
- 低汚染性: 超低汚染リファイン500無機-IRは「『無機成分』を配合することによって緻密で強靭な塗膜を形成。粒子の小さい汚染物質が入り込むのを防ぎます」とし、さらに「無機成分の持つ『親水性』で付着した汚れも洗い流される」と説明しています。無機REVO1000-IRも「劣化に強く、汚れにくい緻密で強靭な塗膜を形成」としています。
- 遮熱性: 無機REVO1000-IRは「特殊遮熱無機顔料を使用。近赤外線を効果的に反射する塗膜を形成」と説明しています。製品名末尾の「IR」はこの遮熱仕様を指します。
これらは耐用年数とは別の性能です。見積書に「無機塗料」とだけ書かれている場合、低汚染タイプなのか遮熱タイプなのかまでは判断できません。商品名まで確認することが大切です。
費用の目安
30坪の外壁塗装について、塗料グレード別の成約平均額が公表されています(ヌリカエ公式データ・2025年12月5日更新)。
| 塗料グレード | 30坪の成約平均額 |
|---|---|
| シリコン塗料 | 83.3万円 |
| ラジカル制御型塗料 | 84.5万円 |
| フッ素塗料 | 107.3万円 |
| 無機塗料 | 119.3万円 |
無機塗料とシリコン塗料の差は36.0万円です。いずれも成約データの平均額として公表されている値で、レンジ(幅)の公表はありません。当サイトの 費用相場ページ と 相場計算機 も、この同じデータを相場マスタとして参照しています。
なお「耐用年数が長いぶん、長い目で見れば得か」という比較は、単純な割り算では成り立ちません。塗り替えのたびに足場の設置費や下地補修費が必要になり、これらは塗料グレードでは変わらないためです。足場代の位置づけは 足場代の相場と役割 で解説しています。
検討するときに確認したいこと
- 商品名を確認する — 「無機塗料」というグレード名だけでは、どの製品かは判断できません。メーカー名と商品名を見積書に記載してもらいましょう。
- 公式の公表値と照らす — 商品名が分かれば、メーカー公式ページで期待耐用年数・試験条件・留保表現を自分で確認できます。
- 年数以外の性能も見る — 低汚染・遮熱などは別の性能です。必要かどうかは建物の条件によります。
- 複数社の提案を比べる — 同じ予算でも、塗料のグレードを上げる提案と、下地補修に手をかける提案では中身が変わります。比較の観点は 見積書の読み方 にまとめています。
塗り替えの必要性そのものは、年数ではなく外壁の状態で判断することも大切です。自分で確認できるサインは 外壁の劣化サイン7つ をご覧ください。
まとめ
無機塗料は、メーカー各社が公式に説明しているとおり、無機成分と有機樹脂を組み合わせた製品群です。公表されている期待耐用年数は20〜22年・25〜28年・非公表と幅があり、根拠となる試験条件も一律ではありません。費用は30坪の成約平均でシリコン塗料より36.0万円高いというデータがあります。
「無機だから何年」と単純化せず、商品名まで確認し、公式の公表値とその留保を読んだうえで、複数社の提案を比べる。これが、公開されている情報だけでできるいちばん確実な確認の仕方です。
よくある質問
無機塗料とは何ですか?
石やガラスに代表される無機化合物の性質を活かした塗料の総称です。ただしメーカー各社は、無機成分だけでなく有機樹脂と組み合わせた構成であることを公式に説明しています。「無機100%の塗料」という意味ではない点に注意してください。
無機塗料は25年もちますか?
アステックペイントの「超低汚染リファイン500無機-IR」は期待耐用年数25〜28年と公表していますが、これは促進耐候性試験に基づく数値で、同社は「試験環境下における推測値であり、耐候性を保証するものではありません」と留保をつけています。同じ無機系でも20〜22年と公表している製品や、具体的な年数を公表していない製品もあります。
無機塗料は硬くてひび割れしやすいのでしょうか?
メーカー公式の説明では、無機成分だけでなく有機樹脂を組み合わせることで柔軟性を確保しているとされています。SK化研は自社の無機シリーズについて「有機樹脂の柔軟性を兼ね備えているため、塗り替えにも適しており」と説明しています。個別の製品がどのような構成かは、公式の製品情報で確認することをおすすめします。
無機塗料とフッ素塗料では、どちらを選べばよいですか?
公表されている耐用年数は無機系のほうが長い製品が多い一方、費用も上がる傾向があります。判断は予算・立地条件・次の塗り替えまでの想定期間によって変わるため、年数だけで決めず複数社の提案と見積もりを比較することをおすすめします。フッ素系の公表値は フッ素塗料とは で整理しています。
見積書に「無機塗料」としか書かれていません。問題ありますか?
グレード名は業界で厳密に標準化された規格ではないため、グレード名だけでは何が使われるか判断できません。メーカー名と商品名を確認し、公式の製品情報と照らし合わせることをおすすめします。見積書の見方は 見積書の読み方 をご覧ください。
出典
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